大阪の実家には、猫の額ほどの庭があり、幼かった私や妹の格好の遊び場だった。

庭にくる鳥・虫・小動物のエピソード
庭にくる鳥・虫・小動物のエピソード

大阪の実家には

●46歳 男性

大阪の実家には、猫の額ほどの庭があり、幼かった私や妹の格好の遊び場だった。
春にはホー・ケキョ・キョと、まだ上手に鳴けない鶯が飛来し、耳を和ませてくれた。夏になると、ヒグラシやツクツクボウシの賑やかな鳴き声が聴こえ、秋口にかけては、夜の帳が降りる頃より鈴虫やらコオロギ、キリギリスの涼しげなシンフォニーが、涼風に乗って愉しめた。
ある夏の日のこと、空が茜差す夕暮れ時に、ふっと庭の芝に目をやると動く影があった。はて何だろう?気にかかり、網戸を開けて庭にでてみて驚いた。アカテガニが歩いているではないか。これには家族も驚いて、ハサミを振り上げるカニを奇妙な面持ちで見ていた。勿論、界隈に海がある訳もなく、近所から逃げ出してきたにしては、庭に至るまでカニは体の何倍もある石段をよじ登らねばならない。よしんば登りついたとしても、マツや椿の植わった木々の合間を縫ってこなければ、芝まではたどりつけないのだ。
カニなど飼った経験があるはずもなく、イタズラに博愛心から介抱しようにも、却って死期を早めかねないとの家族全員の総意もあり、去り行く様をそのまま見守ることにした。

ピックアップ

Copyright (C)2018庭にくる鳥・虫・小動物のエピソード.All rights reserved.